①社会派(?)現代音楽の巨匠フレデリック・ジェフスキーのまとまったピアノ作品集!②バーバーのアダージョ、他J.F.ケネディと関わりのある弦楽四重奏作品集!/他、新譜10タイトル

ALBANYレーベル(アメリカ)

社会派(?)現代音楽の巨匠フレデリック・ジェフスキーのまとまったピアノ作品集!
TROY 1943 (2CD)
フレデリック・ジェフスキー(1938-2021):ピアノ作品集
CD1)
4つのピアノのための小品
「スクエア」(全4曲)
(スコール/ハイエナ/夢遊病者/余興)
ピアノのための小品第4番(別演奏)
CD2)
ノース・アメリカン・バラード(全6曲)
(恐ろしい記憶/おまえはどちら側の人間だ?/
川岸を下って/ウィンズボロ・コットン・ミル・ブルース/
男を不機嫌にさせるには時間がかかる/主婦の嘆き)

マシュー・ワイスマン(Pf)
録音:2022年1月14日、2023年4月7日 CD1[59:05]CD2[56:33]
※2021年に亡くなったアメリカの特異な作曲家フレデリック・ジェフスキーのピアノ作品集。ジェフスキーは代表作「不屈の民」変奏曲で日本でも広く知られているが、ここでは普段あまり聴く機会の少ないピアノ作品が収められている。ジェフスキーは思想的に反体制、左翼に属し、政治的メッセージをはっきり示した作品を数多く残した(前述の「不屈の民」変奏曲はチリの革命歌に基づく変奏曲である)。このアルバムに収められた「ノース・アメリカン・バラード」も古いプロテスト・ソングや労働歌が変奏のテーマになっており、ジャズ、ミニマル、ロック、即興的な要素が折衷されている。作曲者自身優れたピアニストであったため、いずれも超絶技巧を駆使した聴きごたえのある難曲揃い。ピアニストのマシュー・ワイスマンはアメリカの若き俊英で、ジェフスキーの不屈の精神を見事に体現した演奏を聴かせてくれる。

バーバーのアダージョ、他
J.F.ケネディと関わりのある弦楽四重奏作品集!
TROY 1945
「暗黙」~アメリカの弦楽四重奏曲
スティーヴン・マッキー(b.1956):「一輪の赤い薔薇」
サミュエル・バーバー(1910~81):弦楽四重奏曲ロ短調Op.11~第2楽章(弦楽のためのアダージョ原曲)
ヘスス・J.マルティネス:「第6階」(狙撃手の止まり木/危機の中の国/遺産)

ジュリアス四重奏団(SQ)
録音:2021年5月3-12日ベン・ウッド・プレスビーテリアン教会 [63:46]
※いずれの作品も多少の差こそあれ、J.F.ケネディと関わりのある作品が収録されている。マッキーの「一輪の赤い薔薇」はケネディ暗殺から50年経ったメモリアル・イヴェントのための作曲された作品。バーバーの弦楽四重奏曲より第2楽章は「弦楽のためのアダージョ」に編曲されて有名。生前、ケネディはこの作品を深く愛したという。マルティネスの生年は不明だが、テキサス出身の若手作曲家。彼の「第6階」はケネディ没後55年にシックス・フロア博物館(ケネディ暗殺犯がケネディを狙ったとされる教科書倉庫の第6階は現在博物館になっている)の委嘱で書かれた作品。いずれの曲もケネディを偲ぶのか、深い祈りの音楽となっている。ジュリアス四重奏団は奇しくもダラスを拠点に活動する弦楽四重奏団。

※ALBANYレーベル新譜
TROY 1934
「イルミネーションズ」
~ナローン・プランチャルーン(b.1973)の音楽
フェノメノン/新しい地平線/ナマスカー/
失われた魂の移行/光り輝く旅路/
プッバニミッタ/イルミネーションズ

ジェフリー・マイヤー(指揮)
タイ・フィルハーモニック管弦楽団
録音:2017年タイ、マヒドル大学、マヒドル王子ホール [74:24]
※作曲家ナローン・プランチャルーン(b.1973)はタイ出身の作曲家。既に多くの賞を受賞し、アジア、アメリカ国内では確固たる地位を築いている(受賞歴の中には武満徹作曲賞も含まれている)。このアルバムには彼の近年のオーケストラ作品が収められているが、いずれも確かな作曲技術と管弦楽法に支えられた聴きごたえのある作品揃い。ハリウッドで活躍したミクロス・ローザ(映画「ベン・ハー」の音楽を手掛けた)やジェリー・ゴールドスミス(映画「猿の惑星」や「トータル・リコール」など多くの映画の音楽を担当)を思わせるブラス重視の筋肉質な音楽はこれまでのタイ人の芸術家のイメージを刷新する。ジェフリー・マイヤー指揮のタイ・フィルハーモニック管弦楽団も好演。

TROY 1942
クリストファー・テオファニディス(b.1967):ギターを伴う作品全集Vol.1
①ぼんやりした熊座の星(2021)~ギター、フルートとヴィオラのための
②春の詩(2022)~フルートとギターのための
③クリストファー・テオファニディス&メリッサ・スタッダード(b.1969)共作:火の扉(2021)
 ~ギターと合唱のための

ニコロ・スペラ(Gtr)
①マシュー・デーン(Va)
①②クリスティーナ・ジェニングス(Fl)
③リアンナ・ウィムバリー・ウィリアムズ(MS)
③ユージン・ロジャース(指揮)エキシジェンス・ヴォーカル・アンサンブル
録音:2022年3月22,23日、7月14,15日ミシガン大学 [54:29]
※クリストファー・テオファニディスはテキサス出身。イーストマン音楽院、イエール大学で学んだ後、アメリカン・バレエ・シアターへのバレエ音楽の提供やオルフェウス室内管弦楽団への作品の提供で成功を収めた。このディスクは彼のギターのための作品を集成するアルバムの第1弾。彼は基本的に調性で書く作曲家のようだが、彼の出自であるギリシャを想起させる乾いたリリシズム、アルカイックな旋律とハーモニーが魅力。「火の扉」はギターと合唱というありそうでなかった組み合わせが新鮮。

TROY 1944
「スティーヴン・バーク(b.1967)作品集」
①《抱擁》~ピアノのための
②《君を通して》~クラリネットとピアノのための
③《君の中で》~クラリネット、チェロとピアノのための

①②③レネ・コメタ・ブリッグス(Pf)
②③ドナルド・モクリンスキ(Cl)
③マット・ゴーク(Vc)
録音:2023年3月1日、4月12日ニューヨーク、オクテイヴン・オーディオ [69:00]
スティーヴン・バークはアメリカの中堅作曲家。彼は音楽と共に科学の分野でも活躍し、ニューヨーク大学メディカル・センターで脳神経外科と共同研究に携わった経験があるという変わり種。では彼の作品は、というとフランス印象主義を思わせる淡い、繊細な音楽。脳神経外科と関わりのある作曲家だけに癒しの音楽と云った趣きのある作品。

TROY 1946
「レイズド・ストラクチャー」~現代のクラリネット作品
D.エドワード・デイヴィス(b.1980):レイズド・ストラクチャー(2017-19)
セア・マスグレイブ(b.1928):ナルシス(1987)
アレジャンドロ・ラティ:ギターズ(2011)
ドイナ・ロタル(b.1951):メタモルフォシス(1987)
アレクス・スターンフェルド=ダン(b.1980):100年後(2017)

アンソニー・テイラー(Cl、バスCl)
録音:2012年8月27日、2014年6月10日、6月16日、2018年1月3日、4月27日、5月16日、5月18日、5月25日、2019年2月19日、2020年3月2日 [64:30]
※現代の国籍も様々な作曲家達によるクラリネットのための作品集。D.エドワード・デイヴィスは電子音楽の作曲家でもあり、ここではクラリネットをライヴ・エレクトロニクスと組み合わせて合わせ鏡のような不思議な世界を作り出している。ドイナ・ロタルはルーマニアの作曲家で日本のサントリー国際作曲委嘱シリーズのテーマ作曲家として来日したこともある。特殊奏法を含む彼女の作品はヨーロッパ前衛音楽の影響を受けた秀作。スターンフェルド=ダンの「100年後」もデイヴィスと同じく予め制作された電子音響とライヴ・エレクトロニクスのための曲。メカニックでどこか不安に溢れた近未来的なディストピアが描かれる瞑想的な作品。

TROY 1947
「ザ・コンポーザーズ・ヴォイス~ボーリング・グリーンの新しい音楽集Vol.9」
①ミケル・キューン(b.1967):「スフマート」
②シュラミット・ラン(b.1949):「イヤーニング」
 ~ヴァイオリン独奏とチェロ・オブリガートつき弦楽合奏のための
③ガブリエラ・フランク(b.1972):交響詩「イラッパ」~フルートと管弦楽のための
④ルイス・カーチン(b.1951):シェーマス・ヒーニーの詩による4つの歌曲
⑤オーガスタ・リード・トーマス(b.1964):交響詩「ギャラクシー・ダンス」

エミリー・フリーマン・ブラウン(指揮)
ボウリング・グリーン・フィルハーモニア
②キャロライン・チン(Vn)
②ブライアン・スノウ(Vc)
③コナー・ネルソン(Fl)
④ヘザー・バック(Sop)
[70:32]
※この「コンポーザーズ・ヴォイス・シリーズ」はそれぞれの作品の演奏前に作曲者自身の作品解説のアナウンスが収録されているのが特徴。
ミケル・キューンのみ生年が記載されているが(1957年生まれ)他の作曲家は不明である。しかしブックレットの写真から全員、中堅以上の世代と思われる。全員アメリカの作曲家で、それぞれ在米オーケストラのコンポーザー・イン・レジデンスを務めるなど、既に米国内で確固たる地位を築いているようである。このアルバムは彼らの最近の作品を収めたもので前衛的な傾向のものから新ロマン主義的なものまで様々。
中国人とリトアニア系ユダヤ人の両親のもとに生まれたガブリエラ・フランクの、バルトークとヒナステラの影響を受けて書いたという、フルートと管弦楽のための交響詩「イラッパ」に見られるその独自のミステリアスで民族的な音楽に魅了される。

TROY 1948
「深淵の響き」
~ジェフリー・マムフォード(b.1955):作品集
①「フィールドの展開・・・共鳴する光の深淵に響く」~チェロと管弦楽のための
②「ビカミング・・・」~ピアノと管弦楽のための
③ヴァイオリン協奏曲第2番「深まる春の青々とした斑点」

①クリスティーン・ランプレア(Vc)
 カゼム・アブドラ(指揮)デトロイト交響楽団
②ウィンストン・チョイ(Pf)
 マイケル・レワンスキー(指揮)アンサンブル・ダル・ニエンテ
③クリスティーン・ウー(Vn)
 アレン・ティンカム(指揮)シカゴ・コンポーザーズ・オーケストラ
録音:①2017年3月4日デトロイト、②2021年6月14日シカゴ、③2022年8月6日シカゴ [56:13]
※作曲者ジェフリー・マムフォードはアフリカ系アメリカ人の作曲家で、米国内で既に数々の賞を受賞、作品はアトランタ交響楽団を始め、多くのオーケストラ、アンサンブルによって演奏されている。ここに収められた3つの協奏曲的な作品はいずれも激しいウェーベルン、シェーンベルクの影響をはっきりと受けた、点描的、表現主義的な様式で書かれており、聴き手を圧倒する。特にチェロと管弦楽のための「フィールドの展開・・・共鳴する光の深淵に響く」では基本的に終始、チェロの嘆くようなモノローグにオーケストラが合いの手をいれたり、激しく、呼応、共鳴する力作。

TROY 1949
「詩人のこだま」~ブリテン、アーネスト、マシューズ歌曲集
ベンジャミン・ブリテン(1913-76):ミケランジェロの7つのソネット(1940)
コリン・マシューズ(b.1946):6つの中国の歌(2019-20)
ジョン・デイヴィッド・アーネスト(b.1940):ハドリアン歌曲集(2014)
ベンジャミン・ブリテン:詩人のこだまOp.76(1965)
ベンジャミン・ブリテン:エピローグ(1945)(⋆)

ジャスティン・ヴィッカーズ(Ten)
ジョン・オーフェ(Pf)
録音:2020-2022年[72:24] ⋆印世界初録音
※ベンジャミン・ブリテンを中心とした英語の歌曲集。最後に収録されている「エピローグ」は世界初録音となる。コリン・マシューズはマーラーの交響曲第10番の補作全曲版でデリック・クックに協力、またホルストの「惑星」の海王星に続く曲として「冥王星」を作曲して話題を呼んだ作曲家。ジョン・デイヴィッド・アーネストはテキサス出身のアメリカの作曲家。いずれも20世紀の抒情とでも呼ぶべき、瑞々しいリリシズムに溢れた歌曲そろいである。

TROY 1952
「ヴィブラント」~カイラ・シェロン・ジャオ/ピアノ・リサイタル
ラフマニノフ:音の絵Op.33~第8番ト短調、第9番嬰ハ短調
スクリャービン:ピアノ・ソナタ第2番 嬰ト短調Op.19
ラフマニノフ:6つの楽興の時Op.16~第4番プレスト
スクリャービン:24の前奏曲Op.11~第11番ロ長調
シューマン:謝肉祭Op.9

カイラ・シェロン・ジャオ(Pf)
録音:2023年8月マサチューセッツ[53:16]
※カイラ・シェロン・ジャオは中華系の若手ピアニスト。このディスクがまとまった形での初めてのアルバムとなる。ニューヨーク・コンサート・レビューでは「生まれついてのピアニスト」、サン・ファン・デイリー・スターでは「魔法の手を持った無限の力を持つピアニスト」と大絶賛されている。ラフマニノフ、スクリャービンとヴィルトゥオーゾ系の情熱的なピアノ曲とシューマンの抒情的な小品集「謝肉祭」を丁寧なタッチと凛とした音の佇まいで弾き切り、大変好感が持てる。今後の活躍が期待できる新星の登場。