①アラン・ギルバートとボストン交響楽団も登場!21世紀の傑作!?ジャスティン・デロ・ジョイオのピアノ協奏曲!②シュトックハウゼンの難曲とベートーヴェンのハンマー・クラヴィーアをカップリングした超ヘビー級ディスク!/他、新譜6タイトル

BRIDGEレーベル(アメリカ)

アラン・ギルバートとボストン交響楽団も登場!
21世紀の傑作!?ジャスティン・デロ・ジョイオのピアノ協奏曲!
BCD 9583
ジャスティン・デロ・ジョイオ(b.1955):
①ピアノ協奏曲「海を隔てて」(2022)
②「デュー・パー・デュー」(2011)~チェロとピアノのための
③「青と黄金の音楽」(2009)~オルガンと金管五重奏のため

①ギャリック・オールソン(Pf)
 アラン・ギルバート(指揮)
 ボストン交響楽団
②カーター・ブレイ(Vc)
 クリストファー・オライリー(Pf)
③アメリカン・ブラス・クインテット
録音:①2023年1月12、14日、②2011年9月4日、③2009年1月10日 [40:10]
※ジャスティン・デロ・ジョイオはニューヨーク出身で高名な作曲家であるノーマン・デロ・ジョイオを父に持つ。ジャスティンはパーシケッティ、ロジャー・セッションズらに作曲を師事した。初期はルトスワフスキ、ジェイコブ・ドラッグマンの影響を受けたと本人は述べているが、ここに収められた最近の作品はアメリカ東海岸流の手堅い書法と聴きごたえのある音のドラマ、輝くばかりの見事な管弦楽法が聴き手を圧倒する。特にピアノ協奏曲「海を隔てて」はギャリック・オールソンのピアノ・ソロと巨匠アラン・ギルバートの見事な棒さばきの甲斐もあって大いに聴きもの。現代音楽の主要な書法をとりつつ、その中にもロマンの香りが漂っており、21世紀のピアノ協奏曲の代表作のひとつと言っても過言ではない秀作。最後に収められた金管五重奏曲「青と黄金の音楽」はオルガンと金管五重奏のために書かれたもので教会のステンドグラスを思わせる美しい作品。特にブラス関係者は必聴。

シュトックハウゼンの難曲とベートーヴェンのハンマー・クラヴィーアを
カップリングした超ヘビー級ディスク!
BCD 9584
カールハインツ・シュトックハウゼン(1928-2007):ピアノ曲Ⅹ (1961)
ベートーヴェン(1770-1827):ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調「ハンマー・クラヴィーア」Op.106(1819)

マルク・ポントゥス(Pf)
録音:2021年9月22-23日ドリュー大学コンサート・ホール [61:39]
※ベートーヴェンの死後からおよそ百年後に生まれたシュトックハウゼン。およそ何の接点もないように思える二人の作曲家のそれぞれ超絶技巧の大作ピアノ曲をカップリングした異色の一枚。シュトックハウゼンのピアノ曲Xは非常に数理的な構想のもと緻密に設計されているもののトーン・クラスターとグリサンドが多用されており、荒れ狂う波のような音の潮流が聴き手を圧倒する。ベートーヴェンのハンマー・クラヴィーアはピアニストに技巧、技法の極限を要求する大作で、そういう意味ではシュトックハウゼンのピアノ曲と双璧といえるかもしれない。こうしたクレイジーなカップリングのCDを作ったピアニスト、マルク・ポントゥスはシュトックハウゼンのみならずクセナキス、ブーレーズ(ピアノ作品全集の録音あり、BCD9456)など現代音楽を得意としており、逆に現代の視点からベートーヴェンをとらえ直しているといえるだろう。クリアで一点の曇りも迷いもないタッチ、渦巻くエネルギーの奔流など、聴きごたえ充分の一枚である。ぜひ一聴を!

※その他BRIDGEレーベル・カタログ
BCD 9577
「ウルスラ・マムロック(b.1923)の音楽Vol.6」
①「両極性」(1989-1995)~フルート、ヴァイオリン、チェロとピアノのための
②クラリネット、チェロと打楽器のための音楽(1969)
③モザイク(2011)~ピアノ四手連弾のための
④テルツィアヌム(2006)~ヴァイオリンとフルートのための
⑤4つのチェロのための組曲(1957/2008)
⑥ストーニー・ブルックのための音楽(1989)~フルート、ヴァイオリンとチェロのための
⑦「7人のために」(1963/1965)~トランペット、クラリネット、バス・クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、コントラバスと打楽器のための

ウパーマ・マッケンスターム(Fl)
クレメンス・リンダー(Cl)
アデレ・ビッター(Vc)
ホルガー・グロショップ(Pf、指揮)
ルーベン・シュタウブ(Cl)
モイセス・サントス・ブエノ(Perc)
コリヤ・レッシング(Vn)
シェリル・セルツァー&ジョエル・ザックス(四手Pf)
ほか
録音:2017年12月、2019年9月、2021年9月、2022年3月 [65:16]
※今年生誕百年を迎えたアメリカの作曲家マムロックは当Bridgeレーベルが特に力を入れて紹介しており、このディスクが第6集となる。彼女はユダヤ人としてベルリンに生まれたがナチスの台頭によりアメリカに逃れた。作曲をロジャー・セッションズに学んだほか、ジョージ・セルにも一時期師事したこともある。初期にはヒンデミットの影響を受けたと本人は述べているが、このディスクに収められた作品を聴く限り12音技法もしくは自由な無調で書かれており、新ウィーン楽派からの影響は疑いない。しかしシェーンベルクには見られないリズムの創意や朗々と歌われるロマンティックな旋律が登場するなど、聴きどころは多い。日本ではほとんど知られていない作曲家の貴重な作品集。

BCD 9582
「フレッド・ラーダール(1943-):作品集Vol.7」
「インナー・ライフ(内なる命)」(2020-22)~2台ピアノのためのサイクル
1)埋め込まれたループ(19:15)
2)インナー・ライフ(22:33)
3)孤独(4:55)

クアトロ・マーニ:
【スティーヴン・ベック(Pf)、スーザン・グレイス(Pf)】
録音:2023年1月ニューヨーク,クラヴィーア・ハウス [46:45]
※ラーダールは作曲をミルトン・バビット、ロジャー・セッションズに学んだ後、渡独しヴォルフガング・フォルトナーに師事した。こうした経歴から想像されるように彼は初期には12音主義者であったが、その後、音列技法に加えて独自のリズム理論、ピッチに関する研究を作品に反映させた独自の作風を確立した。このディスクはそうした彼の集大成ともいうべき作品で、いわゆる12音技法は影を潜めているようだが、力強いリズムと調性を感じさせる色彩的な和音、クラスターが折衷されてタイトルの通り、インナー・ライフ(内なる命)を見事に表現している。

BCD 9586
「キーボード/ウィンズ」
~ルイス・カーチン(b.1951)の音楽
①ソナタ・ファンタジア(2020)~ピアノのための
②木管五重奏曲(2021)
③3つの映像(2020)~ピアノのための
④夏の歌(1994/2021)~クラリネット独奏のための
⑤ニューヨーク・ノートに載ったジャージの夢(2018)~ピアノのための
⑥プロセッションズ(2007/2021)~オルガンのための

①スティーヴン・ドルーリー(Pf)
②ウィンドスケープ(木管五重奏)
③マイケル・スティーヴ・ブラウン(Pf)
④マリアンヌ・ギスフェルト(Cl)
⑤ハン・チェン(Pf)
⑥カーソン・クーマン(Org)
録音:2022年11月20-21日、2021年7月21日、2023年1月6日、2021年5月18日 [67:31]
※ルイス・カーチンはアメリカの作曲家、指揮者。レオン・カーシュナー、ガンサー・シュラーらに作曲を師事した。師匠のカーシュナーはエリオット・カーターと並ぶアメリカの12音技法による代表的な作曲家であり、ガンサー・シュラーは12音技法とジャズを結び付けようとした作曲家であるため、カーチンにも師匠たちの影響が感じられる。つまりセリー、自由な無調と調性音楽の折衷、ポップスの影響が感じられるなど、アメリカの作曲家らしい多様性に富んだ音楽である。

BCD 9587
「赤い楓(かえで)」~ファゴットと弦楽のための音楽
①ジョン・タワー(b.1938):「赤い楓」(2013)~ファゴットと弦楽四重奏のための
②ラッセル・プラット(b.1965):ファゴット五重奏曲(1996-97)
③マーク=アンソニー・タネジ(b.1960):マッサローザ(2018)~ファゴットと弦楽四重奏のための
④ジュディス・ウィアー(b.1954):「目覚めよ、あなたの野性の声よ」(2008)~ファゴットとチェロのための

ピーター・コルケイ(Fg)
カリドール弦楽四重奏団
録音:2022年1月17-19日ニュージャージー州ドリュー大学コンサート・ホール [56:42]
※ファゴットと弦楽四重奏という珍しい編成の作品を集めた一枚。全体にファゴットと弦楽のための協奏曲といった性格を帯びている。このディスクの中で最も著名なマーク=アンソニー・タネジはマイルス・デイヴィスを20世紀の最も偉大な音楽家と述べるほどモダン・ジャズの影響を隠さない作曲家であるが、ここに収められた「マッサローザ」はそうしたジャズの影響は影を潜め、叙情性が優った美しい佳品に仕上がっているものの、ファゴット・パートに時折りマイルスの影響がこだましているのはご愛嬌。ファゴットのピーター・コルケイはソリストとして主にアメリカの現代音楽を主なレパートリーとしている若手奏者。