聴きごたえあり!キューバ出身マルタ・マルチェナのヴィラ=ロボスのピアノ作品集!/他、新譜6タイトル

MSRレーベル(アメリカ)

聴きごたえあり!キューバ出身マルタ・マルチェナの
ヴィラ=ロボスのピアノ作品集!
MS1764
「ブラジルの魂」~ヴィラ=ロボス:ピアノ作品集
エイトル・ヴィラ=ロボス(1887-1959):
ショーロ第5番「ブラジルの魂」(1925)
野蛮な詩(1921-26)~アルトゥール・ルビンシュタインに捧ぐ
悲しみのワルツ(1932)
ブラジル風バッハ第4番(1930-41)
ブラジル風連作(1936-37)

マルタ・マルチェナ(Pf)
録音:2017年1月30-31日キーン大学、ニュージャージー州 [76:42]
※多作家だったヴィラ=ロボスの作品の中でも特に作曲者が力を注ぎ作品数も多いピアノ作品から選りすぐりの作品を集めた一枚。ヴィラ=ロボスというと本アルバムにも収められた「ブラジル風バッハ」が特に有名でブラジルの民族的要素を取り入れたエキゾチックで美しい作品を書く作曲家というイメージがつい先行するが、このピアノ作品集を聴くと、ピアノというコストパフォーマンスのよい編成のせいか(なにしろ奏者は一人で済むわけなので)、作曲者はここで様々な実験を試みており、実に興味深い。ルビンシュタインに献呈された「野蛮な詩」は7歳年上のバルトークを思わせる不協和音(ヘンリー・カウエルやリゲティのトーン・クラスターにほとんど近い和音)とリズムに溢れており、ヴィラ=ロボスの前衛的な側面を窺い知ることの出来る大変意義深いアルバム。ロボスがパリ滞在中、エドガー・ヴァレーズと親交が深かったというエピソードも頷ける内容である。出色の一枚! マルチェナはキューバ出身のピアニストでこれまでMSRレーベルからラテン・アメリカのピアノ作品アルバムが3枚発売になっている。

※その他MSRレーベル新譜
MS1673
「夜想曲とロマンス」
 ~ゲオルク・ゴルターマン(1824-1898):チェロとピアノのためのサロンのための小品集
夜想曲ロ短調Op.59-1/
3つのサロンのための小品Op.92より2曲/
3つの象徴的なロマンスOp.95/
3つの言葉のないロマンスOp.90/
3つの夜想曲Op.125/ほか全22曲

キャサリン・デッカー(Vc)
パク・ウンヒ(Pf)
録音:2019年8月30日-9月1日ウィスコンシン大学 [78:19]
※ゲオルク・ゴルターマンは19世紀初頭から世紀末まで活躍したハノーバー出身のドイツの作曲家。世代としてはロベルト・シューマンとブラームスの中間に当たる。チェリストとして音楽家のキャリアを開始したが、後に作曲に専念するようになり、チェロ協奏曲や交響曲などを多数発表した。作風は前述の通り、シューマンとブラームスの中間世代ということと関係あるのか、それとも中期ロマン派の様式というものが、そもそもこういうものなのか、ある時はシューマン、またある時はブラームスといった具合に、シューマンとブラームスを結ぶ過渡的な様相を呈しており、なかなか興味深い。彼は自ら演奏するため多くのチェロとピアノのためのサロン向きの小品を残しており、このディスクにはいずれも流麗で美しい旋律の佳品が揃っている。

MS1725
ジョージア・シュリーヴ:
①「ラヴィニア」(2020)~1幕のオラトリオ
台本:ジョージア・シュリーヴ
②「アンナ・コムネナ」(2020)~1幕のオラトリオ
台本:ジョージア・シュリーヴ

スティーヴン・マーキュリオ(指揮)
チェコ・ナショナル交響楽団
メレディス・ラスティグ(Sop)
カルラ・ヤブロンスキ(M.Sop)
アレクサンダー・マクキシック(Ten)
ティモシー・マクデヴィット(Br)
ブラントン・セデル(B-Br)、ほか
録音:2020年プラハ [78:30]
※ジョージア・シュリーヴの生年は不明だが、ブックレットの写真から中堅世代以上の作曲家と思われる。彼女は声楽曲を中心に創作を続けており、管弦楽曲、オペラなどを発表、またブロードウェイ、オフ・ブロードウェイでも舞台作品を発表し好評を博している。「ラヴィニア」とはローマ神話の女性の登場人物、「アンナ・コムネナ」は1000年代に実在したとされるビザンツ帝国の女性で、この時代としては高い教養を持った女性であった。作曲者はこの二人の女性をフェミニストの元祖としてとらえ、自ら台本を書きオラトリオ化した。音楽はロマンティックでブロードウェイの音楽を担当する作曲家だけあって親しみ易いもの。

MS1753
「FIVE BY FOUR」~ニャホ/ガルシア・ピアノ・デュオ
エレノア・アルベルガ(b.1949):2台ピアノのための組曲(1986)
ドナルド・グランサム(b.1947):ガーシュウィンの前奏曲第2番による幻想変奏曲(1996)
トーマス・H.カーJr(1915-88):コンサート・スケルツォ「わが主はダニエルを解放しなかったのか?」(1996)
ステラ・サング(b.1959):「周転円」(1992)~連弾のための
エレノア・アルベルガ:「3デイ・ミックス」(1986)~連弾のための
アストル・ピアソラ(1921-92) (パブロ・ツィーラー編):
「天使のミロンガ」~2台ピアノのための
「天使の死」~2台ピアノのための

ニャホ/ガルシア・ピアノ・デュオ:
【ウィリアム・チャップマン・ニャホ(Pf)
 スザンナ・ガルシア(Pf)】
録音:2021年6月1-4日、ワシントン州タコマ、パシフィック・ルーテル大学 [63:36]
※2台ピアノあるいはピアノ連弾のための作品を収録。ピアソラ作品以外は全てオリジナル作品。いずれもジャズやロックのリズムの影響を受けたリズミックで活気に満ちた、親しみ易い作品が揃っている。ニャホ/ガルシア・ピアノ・デュオは共にテキサス大学で学んだピアニストで結成された。既成のレパートリーだけでなく、2台ピアノ、連弾のための新作を作曲家に委嘱しレパートリーの拡充に務めている。

MS1788
「こどもの遊び」
ブラームス(1833-1897):5つの歌曲Op.49(1868)
シヒョン・オム(b.1999):「サーカス」組曲(2014/2020)
エドワード・ナイト(b.1961):「七日月」(2010)
ラヴェル(1875-1937):マ・メール・ロワ(1910)
グリエール(1875-1956):ゆりかごの歌(1909)

エンヘイク:
【キム・ウォンカク(Cl)
 M.ブレント・ウィリアムズ(Vn)
 キャサリン・デッカー(Vc)
 パク・ウンヒ(Pf)】
録音:2021年8月3-7日 [64:38]
※クラリネット、チェロ、ヴァイオリン、ピアノによる子供のための音楽集。オリジナル作品はシヒョン・オムの「サーカス組曲」とエドワード・ナイトの「七日月」で他は編曲作品。ブラームスは有名な「ブラームスの子守歌」が含まれる歌曲集のアレンジ。ラヴェルの「マ・メール・ロワ」はなかなか秀逸なアレンジで、この編成のために作曲されたかのよう。グリエールの「ゆりかごの歌」は小品ながら優美な旋律が魅力的。
エンヘイクのメンバー、チェロのデッカーとピアノのパクの2人による「ゴルターマン:チェロ作品集(MS1673)」も今回発売になる。

MS1789
「マルティン・マタロン(b.1958):ピアノ作品集」
①トレイムIV(2001)~ピアノと11楽器のための協奏曲
②策略(2014)~ピアノ独奏のための
③二つの時間(2000)~ピアノ独奏のための
④機械(2007)~2台のピアノ、二人の打楽器奏者とエレクトロニクスのための

エレーナ・クリオンスキー(Pf)
①ジョエル・サックス(指揮)ニュー・ジュリアード・アンサンブル
④サロメ・ジョルダニア(Pf)
 イヴ・ペイヤー(Perc)
 ジュリアン・マセド(Perc)
 デイヴィッド・アダムシック(エレクトロニクス)
※マタロンはブエノスアイレス出身のアルゼンチンの作曲家で現在ニューヨークを拠点に活動している。パリのIRCAMで電子音楽とコンピュータ音楽の研究と制作に励み、その成果はアコースティックな楽器の作曲に表れている。ピアノと室内アンサンブルのための協奏曲「トレイムIV」ではリゲティばりの細かく動き回る音型がキラキラした鉱物質の光彩を放つリリカルな音楽。スペクトル楽派の影響が感じられる。2台ピアノと打楽器、エレクトロニクスのための「機械」はピアノの細かく動き回る高音のキラキラした音色に打楽器やエレクトロニクスの音響が絡む大作。星のまたたきや宝石の輝きを思わせる明るい響きがこの作曲家の好み、個性のようで、フランス現代音楽(ブーレーズなど)の影響を思わせる。